自然エネルギー(太陽電池、バイオガス)を使用し、化学肥料や農薬を使わない有機農法で農作物を生産
1971年一軒から始まった有機農業。現在、小川町下里集落の37戸は全員が有機農家になった。。
美しく豊かな有機の里、下里集落は22
年度農林水産省のむらつくり部門で、天
皇杯を受賞した。
「農業をしていたおばあちゃんのようなごつごつした手になりたい」と話す有井佑希さん(27)。ジャガイモ掘りで爪や手のしわまで土まみれになっている手を見せてくれた。「もっと土とともに生きる生活をしたい」と話す。3年間の研修後、農家になって2年目。埼玉県比企郡小川町周辺には、有機農業をする集落が点在する。農家には泊まり込みで若い研修生が1年間かけて有機農業を勉強している。研修後にも小川町周辺に残り、独立して農家を始める人も多い。埼玉県小川町周辺は有機農業を始める若い人たちのメッカとして注目を浴びている。農業を始めた人の経歴もいろいろだ。長年つとめた出版社をやめた人や大学卒業後、カンボジヤで農業支援をしていた人。米国で留学していた若者など。「この町には、食とエネルギーの自給を目指し、手さぐりで実践してる農家がいます。彼らは自分の生き方に自信を持っています。だから若者が集まってきているんです」と有井さんは話す。仲沢健治さん(28)は、公務員やめて有機農家になるために今年、研修生になった。有機農業は、若者たちにとって単なるひとつの農業の方法ではなく、生き方そのものとしてある。「原発や化石燃料に頼らない生き方をしたいと思うようになりました。ここにはそのような生き方のモデルがあります」と話す。稲葉陽一さん(38)は単一耕作の現代農業といまだに食がほとんど’海外に依存していることに危機感を感じた農業を始めた。「僕にとって農業は単なる仕事ではなく、自己実現です」と話す。小川町で33年間研修生を受け入れ、食料とエネルギーを自給している金子美登さんは「土を豊かにすることで、農という資源に、私たちは限りなく依存することができます。農業を中心とした自立した地域社会をつくっています」と語る。「エネルギーと食の自給」の問いのひとつの答えが、小川町にあることを若者たちは分かっているのだろう。山々に囲まれた農地から若者たちの笑い声が絶えない。